大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

福岡家庭裁判所小倉支部 昭和44年(家)130号 審判

〔主文〕相手方は申立人に財産分与として金六〇万円を本審判確定の日から毎月末日限り各金二万円宛支払うこと。

〔理由〕一、申立の趣旨

申立人は相手方に対し財産分与として昭和四三年七月当時相手方が所有していた財産の二分の一相当額の支払を求める。

二、申立人の主張

申立人と相手方とは、昭和三二年五月五日同居を始めて事実上の婚姻生活を送つてきたのであるが、夫婦間がうまくいかなくなつて昭和四三年七月別居し上記内縁関係を解消した。ところで相手方の有する財産は、相手方と申立人とが内縁関係において双方協力して築いてきたものであるからここに上記財産分与を求める。

三、相手方の主張

申立人には次の理由により財産分与請求権はない。

(1) 申立人は相手方が反対するのに拘らず一方的に別れ話を持ち出して家を出、相手方との内縁関係を解消したのであり、従つて財産分与請求権はない。

(2) 申立人は何も財産はいらないから別れてくれと申し出たために相手方との内縁関係は解消されたのである。よつて申立人には財産分与請求権はない。

(3) 相手方所有名義の財産は主として相手方および相手方とその先妻との間の子とが協力して作つたもので、申立人は同財産の蓄積については間接的に多少寄与しているにすぎない。

(4) 仮に以上が認められないとしても相手方は申立人に対して内縁関係解消に際し総額一二〇万円以上にのぼる現金および物品を支給してある。

四、当裁判所の判断

(1) <証拠略>によれば、相手方は、申立人の亡姉ともと夫婦であつたが、同女が死亡後に再婚した妻(以下相手方の先妻という)との間に合計六人の子供をもうけていたところ、先妻が昭和三二年三月死亡し幼い子の養育の必要もあつて相手方の希望で同年五月五日申立人と事実上の婚姻生活に入つたこと、申立人と相手方とは昭和四三年七月一八日話合のすえ申立人が家を出て別居し、以後内縁を解消したこと、申立人と相手方とは上記のとおり約一一年間内縁関係にあつたが、婚姻届出をしなかつたのは、申立人が当時亡夫の遺族扶助料を受給していたしまた亡夫との間の子(以下申立人の子という)が婚姻届出について反対していたためであること、申立人は当裁判所に昭和四三年一一月二九日内縁解消に伴う財産分与請求の調停申立をし昭和四四年二月六日第一回期日において調停が行われたが、当事者間に合意成立の見込みがないとして調停は不成立になり審判手続に移行したこと、以上が認められる。

上記事実によれば申立人と相手方とは内縁関係にあつたにすぎないけれども、内縁は婚姻に準ずる関係であるから、内縁解消の場合にも離婚の場合に準じて財産分与の請求ができると解されるので、以下申立人の財産分与請求の当否について調べることとし、また民法七六八条に規定する財産分与請求権は、夫婦が婚姻中互に協力して作つた財産の清算と離婚後一方が生計に窮すると認められる場合における他の一方の扶養義務との二つの内容を含むと解されるので、以下これらを基準として考える。

(2) 内縁解消に至るまでの事情

前掲<証拠略>によれば、申立人と相手方の内縁関係存続中の家庭生活は、当初、相手方とその先妻との間の二男浩一郎(昭和一五年九月二五日生)、三男三郎(昭和一八年一月二日生)四男四郎(昭和二一年五月一八日生)五男五郎(昭和二三年三月二三日生)長女裕子(昭和二四年一一月二〇日生)六男六郎(昭和二八年七月二二日生)および申立人とその先夫との間の三男安夫(当時中学二年生)とが同居し、申立人は相手方と共にこれらの子供を養育し、相手方の四男につき高校を、同三男、長女、五男および申立人の子安夫につき中学をそれぞれ卒業させたのであるが、相手方の子が成長するにつれ、相手方と相手方の子は申立人に相談せずに家庭内の事柄を決めてしまうなどして申立人の存在を無視した態度に出るようになり、また申立人およびその子と、相手方およびその子との折合が悪く、このため申立人がいずらくなり、かつ将来に不安を感じて、相手方に対し相手方所有の不動産の一部の名義を自己に変更方要求し、申立人の兄姉も中に入つてこの点を協議したが、相手方においてその要求に応じなかつたことから、申立人において内縁解消を申し出て家を出、ついに申立人、相手方双方は内縁解消するに至つたこと、以上を認定することができる。

上記事実によれば、申立人が自ら内縁解消を阻止すべく努力しないで家を出てしまつたのが原因で内縁解消という今日の事態を招来するに至つたとも考えられるが、相手方にも、申立人が相手方とその先妻との子(内縁関係開始当時三歳、七歳、九歳、一〇歳、一四歳、一六歳)を養育し一一年二カ月間家事や後記認定のような家業である食堂営業をも大過なく処理してきたのに、相手方の子が成長するに伴い申立人になじまなくなり相手方もそれを改善する努力をせず、申立人の精神的苦労をいたわる配慮に欠けていたことも内縁解消の原因であつて、この点相手方にも内縁解消の責任はあるといわざるを得ない(当事者双方の責任の有無は後記内縁解消後の扶養面から本件財産分与の額を定めるにつき斟酌すべきことなのでここで認定した)。

なお申立人は相手方が特定の女性と親しく交際していたことも内縁解消の一理由である旨主張するが、これを認めるに足る資料はない。

(3) 相手方の資産状況および申立人の協力の程度

<証拠略>によれば、次の事実を認めることができる。

申立人と相手方とは、上記のように昭和三二年五月五日から内縁関係に入つたのであるが、両者の家庭を維持する収入としては、相手方が○○ガラスに勤務して給料同日当時月三〇、〇〇〇円位、同社退職時である昭和三九年四月当時月五〇、〇〇〇円位、相手方の軍人恩給月三、〇〇〇円位、相手方所有の別紙物件目録一記載の土地を他に貸与して得る賃料月三、〇〇〇円位、相手方の内縁開始前有していた貸金債権の回収分(但しこの分は昭和三三年二月頃から不規則ながら月六、五〇〇円宛五〇万円に達するまで弁済を受けた)があり、また申立人は先夫の遺族扶助料として三カ月当り昭和三二年五月当時六、〇〇〇円、昭和四三年一二月当時二八、〇〇〇円の支給を受けており(但しこの遺族扶助料は申立人の子の養育費に優先的に使用し、残りを申立人、相手方の内縁関係費用に充てていた)、更に、申立人の長男芳夫が昭和三三年五月頃から月約一〇、〇〇〇円、昭和三四年五月頃から昭和三八年頃まで月約一五、〇〇〇円宛を仕送りし、相手方の二男浩一郎が高校卒後業自衛隊に入隊して月五、〇〇〇円位宛送金し、後に日一〇、〇〇〇円位を数回、昭和四三年三月頃以後月一五、〇〇〇円位宛送金し、相手方の三男三郎が中学卒業後職業訓練所に一年行き、三年近く病気療養した後、昭和三九年一〇月以後月八、〇〇〇円位、昭和四二年八月以後一八、〇〇〇円位宛を家計に入れ、相手方の四男四郎は高校卒業後昭和四〇年頃より月六、〇〇〇円位宛入金ないし送金していたこと、支出ないし経費としては内縁関係開始当時計五二、〇〇〇円の相手方の負債を月六、五〇〇円位宛返済し、相手方の子四名につき上記のように高校、中学をそれぞれ卒業させ、申立人の長男芳夫に月三、〇〇〇円位宛七カ月間学資の仕送りをし、引継き三カ月間学資を出して無線学校に通学させ、申立人の三男安夫を中学卒業させたこと。相手方は昭和三七年経費三二万円位で別紙物件目録四記載の店舗を建築して昭和三八年一〇月頃より同所で食堂を開業し、荒利益一カ月当り七〇、〇〇〇円位を得るに至つたこと、相手方は昭和三九年四月、○○ガラスを停年退職(三〇年七カ月勤務)して、退職金約二七〇万円を得、退職後は九カ月間月三六、〇〇〇円の割合による失業保険金と上記食堂営業による利益とで一家の生計を立ててきたこと、食堂営業は、営業用什器、備品などは家計から購入し、申立人が会計を担当し、相手方も材料の野菜を作るなどして一家で協力して行つていたが、主として中学卒業後板前修業をしていた申立人の三男安夫が行つていたものであること、内縁関係存続中に蓄積された資産としては、(イ)相手方は昭和三五年一二月別紙物件目録三記載の家屋を建築所有、この費用一三〇万円位は勤務先の○○ガラスより借入れ、これを上記退職時まで給料より少しずつ約三〇万円をおよびその残額約一〇〇万円を上記退職金より返済したのであるが、同家屋建築に当つては申立人の実家、親せきの者約五、六名が農業の傍ら一四、五日間材木の切込みなど労力の提供をしていること、(ロ)次に相手方は昭和四〇年六月退職金の中七〇万円位と他より借入れた一八〇万円との計二五〇万円で別紙物件目録五記載のアパートを建築し、借入金一八〇万円についてはアパートから得る賃料月五八、〇〇〇円で毎月弁済し、昭和四三年一〇月までにこれを完済したこと、従つて本件内縁解消の同年七月当時上記借入金債務残額は約二三万円であつたこと、(ハ)また相手方は上記のとおり昭和三七年三二万円で店舗を(イ)の家屋に付属して建築していること、(ニ)その他申立人の三男安夫の名義ではあるが申立人と相手方との家計より取得した電話加入権があること、内縁解消時における(イ)ないし(ハ)の価額は(イ)の家屋が九七万円、(ロ)のアパートが一三二万円、(ハ)の店舗が二一万円、以上合計二五〇万円相当であり、(ニ)の電話加入権についてはその所在地(相手方の肩書住所地)からみて一〇万円相当であること、以上が認められる。

以上によつて本件内縁関係中の蓄積財産を調べるに、上記相手方の収入のうち軍人恩給、相手方所有土地からあがる賃料、相手方の貸金債権回収分、相手方の内縁開始前からの負債、および申立人の得ていた遺族扶助料は、いずれも相手方および申立人の各特有財産(負債については相手方特有の負債)とみるべきであるが、これらはいずれも上記認定の生活状況からみて内縁費用の分担(婚姻費用の分担制度は内縁についても準用されると解する)として双方の内縁関係維持に提供されたものとみるのが妥当であり、従つて本件内縁関係中の蓄積財産より控除(負債については加算)しない。また、相手方は昭和三九年四月勤務先を退職するに際し退職金として約二七〇万円の収入があり、従つてこの退職金のうち、勤務期間三〇年七カ月に対する本件内関係開始前の勤務期間一九年五カ月分(約三分の二となる)に相応する金員は実質的には相手方の特有財産とみるべきものであるところ、上記のように退職金中一〇〇万円は上記家屋の建築費にまた七〇万円は上記アパートの建築費に各使用しており、本件内縁解消当時同家屋、アパートに変形されてその価値が残存していたとみられるので、この残存分を計算すると、

家屋については 100万円

×97万円(内縁解消当時の家屋の時価)/130万円(家屋建築費)

アパートについては 70万円

×132万円(内縁解消当時のアパートの時価)/250万円(アパート建築費)

となり合計約一一二万円中上記のように三分の二は相手方の特有財産とみるのが相当であるら、この分すなわち、については、相手方の特有財産として上記内縁関係中の蓄積財産より控除することとする。

なお、前掲資料によれば上記退職金約二七〇万円のうち相手方の特有財産とみなすべき三分の二相当額中、上記家屋、アパートに変形された分以外は内縁解消当時すでに内縁関係中の生活費等に費消され現存していないと認められるので、この分は内縁費用の分担金として提供されたものとみるのが妥当である。

相手方は、申立人において内縁関係存続中相当額の預貯金をしている旨述べているがこれを認めるに足る資料はないし、また相手方は審問において相手方の受給した労災補償金で上記(ハ)の店舗を建築したものである旨述べているがこの点は相手方に対する第一回審問結果に照らして措信できない。

更に、申立人は本件内縁解消の際内縁関係中相手方が購入した食堂営業用什器を持つて出ているが、その価額は一五万円相当であること後記認定のとおりであつてこのように申立人が相手方から受けた財産があればこれを相手方の資産に加え分与額を算定するのが相当な措置であるので、上記営業用什器の価額を本件内縁関係存続中の蓄積財産に加えることとする。

なお、相手方は、申立人が内縁解消に際して持つて出た営業用什器の価額は六〇万円相当で、またその際四五万円相当の自動車をも持つて出ている旨主張するけれども、相手方杉本秀夫に対する各審問の結果や前掲大島恵作成の調査報告書中この主張にそう部分は、申立人、神野安夫に対する各審問結果に照らして措信し難く、他にこれを裏付ける資料はなく、かえつて同証拠によれば、相手方主張の自動車は、申立人の三男安夫が知合のバー経営者より贈与を受けたセドリックバンを昭和四三年六月頃売却処分し、その代金を頭金にして安夫が購入しかつ残金を同人において月賦返済している車のことであつて、安夫固有のものと認められるし、また相手方主張の営業用什器の価額は申立人、神野安夫に対する各審問結果を併せ考えると一五万円相当であると認められるのでこの主張は採用できない。

以上によると、本件内縁関係存続中相手方が蓄積した財産は上記(3)記載の(イ)(ロ)(ハ)の不動産合計二五〇万円から上記相手方の特有財産分とみなすべき七五万円を控除した175万円(家屋、店舗、アパート分)+10万円(電話加入権分)+15万円(営業用什器分)−23万円(アパート建築費の残債務)=177万円となり、これが本件で財産分与をすべき場合の清算の基準価額となる。

(4) 内縁関係解消後の当事者双方の生活状況

前(3)項冒頭掲記の各証拠によれば、申立人は内縁関係解消後相手方より食堂を開く資金等として一〇万円を受領した外、内縁解消に当り従前の食堂営業に用いていた営業用什器(冷蔵庫、食器、椅子など)計一五万円位を持つて家を出ているがその外には資産、負債ともになく船員をしている長男芳夫(妻および子一人)方に身を寄せ、遺族扶助料を三カ月当り昭和四三年一二月当時二八、〇〇〇円、昭和四四年一〇月以降三〇、二四〇円、昭和四六年一月以降三八、〇〇〇円を受給して生活しており、これによる不足分は芳夫の援助に頼つていること、従つて申立人の今後の生活は全く不安がないともいえないこと、一方相手方は六男、長女の二名と昭和四五年六月二日再婚した妻との四人暮しで上記家屋に住み、資産として上記家屋、店舗、アパートの外、別紙物件目録<略>一、二記載の土地を所有しており、収入としては軍人恩給が月三、〇〇〇円、厚生年金が月八、六〇〇円、上記アパートからの賃料月五八、〇〇〇円があり、負債としては別紙物件目録二記載の土地に対する換地清算金支払債務八〇万円を負担している(これは相手方が内縁前より所有する同土地についての債務であるから相手方固有の債務である)のみであることが認められる。

(5) 相手方の主張に対する判断

相手方は本件内縁解消については申立人が一方的に申入れて家を出ることによつてなされたものであるからこの点から財産分与請求権がない旨主張するけれども本件内縁解消についても相手方にも責任のあることは前認定のとおりであるし、そもそも財産分与の性質を前記のように夫婦の財産の清算と離婚(内縁解消)後の扶養と解すれば、内縁解消についての責任の有無は清算という面には影響しないし、た扶養という面では考慮すべき事情であるけれども夫婦の一方に全く責任がないからといつてこの点のみから直ちに扶養義務も発生しないとはいえないのであつて、従つて相手方の上記主張は採用できない。

次に相手方は、申立人が財産分与請求権その他財産上の請求権を放棄した旨主張し、相手方、杉本秀夫に対する各審問結果によれば、申立人が双方の別れ話がでた際相手方に対し、転居のための費用として四万円もらえば他に何もいらないから別れてくれと発言したことがあると認められる。しかしながら財産分与請求権のうち離婚(内縁解消)後の扶養部分は放棄はできないものと解されるし、また夫婦財産の清算分についてみると放棄は可能にしても(イ)本件のように内縁関係の夫婦にすぎない場合は、法律婚の場合と異り夫婦関係の解消につき離婚届出をなすなど相手の同意に基づく手続も不要であつて、従つて強いて申立人が相手方の同意を得ておかなければならない必要もなかつたこと、(ロ)前認定のように本件内縁解消の際申立人は相手方に対し転居費用として四万円しか要求していなかつたのに相手方は上記の如く内縁解消の後申立人の要求に応じて一〇万円を交付していること、(ハ)本件内縁解消の契機の一つが、申立人が相手方所有名義の不動産について自己への名義書換えを要求したことにあること、(ニ)夫婦の別れ話が難行したとき話のいきさつでもう何もいらないから別れるだけ別れてくれなどという言辞が真意でなく用いられる場合が多々あること、以上(イ)ないし(ニ)と申立人に対する審問の結果(第三回)を総合すると、申立人が相手方に対し前記発言をしたにしても、この意思表示は申立人の真意でなく、かつこの意思表示が真意でないことを相手方において少くとも知ることができたと認めるのが相当であり、よつて申立人の同意思表示は無効であるから相手方の上記主張も採用しない。

続いて相手方は、相手方所有名義の資産は主として相手方の子らの協力によつて蓄積されたもので申立人の寄与分は少くかつ間接的である旨主張するけれども、前(3)項で認定した仕送り分以外に相手方の子らの寄与を認めさせる資料はないし、同仕送分をもつて特別寄与があつたともいい難くかえつて前認定の事実からすれば内縁関係の存続中財産の蓄積に当つたのは相手方の外には主として申立人であつたというのが相当である。従つてこの点に関する相手方の主張も採用できない。

相手方は申立人に対し内縁解消に際して総額一二〇万円以上にのぼる現金ないし物品(車、営業用什器)を支給してある旨主張するのでこの点を調べるに、相手方が申立人に対し内縁解消後一〇万円を支給し、また申立人が安夫と共に家を出る際一五万円相当と食堂営業用什器を持つて出ていることは前認定のとおりであるけれども、申立人が内縁解消の際持つて出た営業用什器が六〇万円近い価値のものであり、同じく申立人が持つて出た布団や相手方の先妻の着物などが数十万円の価値のものである旨の主張にそう資料部分は申立人、神野安夫各審問結果に対比して措信し難く、主張にかかる車が申立人の三男安夫固有のものであることは前示のとおりであるし、同証拠によれば、上記布団、相手方先妻の着物などは特別価値のある程のものではないし相手方の先妻の着物も申立人が更生して使うよう相手方より承認を得ていた申立人固有財産であり申立人は申立人、安夫各固有の衣類の外に家具は持出してはいないことが認められる。よつてこの点に関する相手方の主張も採用できない。

(6) 以上みてきた内縁関係継続中における当事者双方の具体的状況、蓄積財産、内縁解消後における申立人の生活程度、相手方の分与能力その他諸般の事情を総合勘案するに、本件内縁関係は殆んど相手方の収入に依拠して維持されてきたとはいえ、家事および相手方の子の養育ならびに家業(食堂営業)の面で申立人の寄与した程度は大きく、内縁関係中における財産の蓄積も申立人の上記協力によりはじめて可能になつたともいうべきであるから、双方が内縁を解消した以上その財産の所有者である相手方は申立人に対し財産を分与すべき義務があるといわなければならず、その分与額は(イ)夫婦財産の清算という面からみて、申立人の上記寄与の程度を四〇パーセントと評価し、前記分与の基準価額一七七万円の約四〇パーセントである七〇万円を、および(ロ)上記のように本件内縁解消について双方に責任のある点に照らして内縁解消後の扶養という面からみて一五万円、以上合計八五万円をもつて相当と認める。ところで、申立人は相手方より本件内縁解消後一〇万円および食堂営業用什器一五万円相当を受領していることは前認定のとおりであり、この受給は上記認定事実からみて財産分与の一部支払と認められるので、結局相手方は申立人に対し財産分与としてこの合計二五万円を上記八五万円より差引いた残六〇万円を支払うのが相当であり、なおその支払方法は相手方の資産状況を考慮して本審判確定の日から毎月二万円宛三〇カ月に分割して支払うのが相当と認める。

よつて主文のとおり審判する。

(武田多喜子)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!